仕事の魅力から会社を探る
株式会社トランストロン

トランストロンにとっての長年の夢、ECMの商品化

大森 篤氏
エンジン制御開発部
部長
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ、燃費が良くCO2の排出量が少ないため、経済的で地球温暖化防止に貢献できるエンジンとして、ヨーロッパでは広く普及が進んでいる。今後も世界では更に普及が加速すると予測されているが、一方で排出ガスにNOxなど大気汚染物質が含まれていることから、エンジンのより高度な制御が求められている。そのために、燃料噴射量、噴射圧、噴射時期などの制御を行い、最適なディーゼル燃焼を実現させるために欠かせないのが、ディーゼルエンジン制御ユニット(ECM)である。
「ディーゼルエンジン用ECMの商品化は、トランストロンにとって長年の夢でした」(大森)という言葉が示す通り、同社では1990年の設立以来、ディーゼルトラックに搭載するECM開発のトライアルを何度も重ねてきた。ディーゼルエンジンの排ガス規制が厳しくなってきた98年ごろ、ある自動車メーカー内で、世界の競合との差別化を図りオリジナリティを発揮することを狙い、小回りの利くようECMの内製化が検討されるようになった。そこでトランストロンとの共同開発の話が持ち上がり、新プロジェクトがスタートすることとなった。
従来製品にはない新技術を満載し、開発に成功

小倉 洋介氏
エンジン制御開発部
グループリーダー
メーカーのテストコースで年末に試乗会を開催し、そこでの評価を受け、2000年には量産化を実現した。しかし、これらのECMの量産は、限られた車型のみの搭載だった。そこで次なる目標となったのが、次期モデルへのコモンレール型噴射システム用ECMの搭載であった。コモンレール型とは、順番にメカニカルな噴射を行う従来の分配型噴射システムとは異なり、燃料を蓄圧室(コモンレール)に蓄え、超高圧で燃料を噴射することで環境負荷を抑えるものである。

松本 智弘氏
エンジン制御開発部
「従来、ECMは車室内に置かれていましたが、クルマの高機能化が進みスペースが限られていることから、エンジンに直接取り付けられるものにし、そのために世界最小、最軽量ECMの開発を目指しました」(大森)。そして、それらを実現するために、通信や情報機器の分野で長年培った高度な実装技術を自動車でも活かせないかと、富士通株式会社の実装技術部門との共同開発が始まった。
「とにかくECMサイズを小さくし、なおかつエンジン直付けで高温や振動にも耐えられなければなりません。そのための部品もまだない状態で、回路の設計や基板の設計には苦労しました」(松本)。部品メーカーの協力を得て、さらに富士通に対しても、自動車ならではのノウハウを伝えていった。また、CPUの周りにノイズの発生する部品を配置しないよう提案を重ね、ハードウェアの設計を行っていった。
「ソフトウェアも小さくしなければなりませんでしたので、どこを共有化していけば量を減らせるか神経を使いました」(小倉)。
本格的な量産を実現し、環境のクリーン化に貢献
「技術的なハードルは非常に高く、苦労も多い日々でしたが、反面開発メンバー全員が必死になって取り組み、量産に漕ぎ着けた商品でした」(大森)。その後、全車種への標準装備が進められた。従来のものは機能を高め小型化などを実現するため、ほとんどがカスタム品を使っていた。そのため全車種に装備するにはコスト的な問題があった。そこで開発コンセプトを大幅に見直し、上下2枚のプリント基板を1枚化するなど構成を変え、部品も汎用品に切り替え、新たな放熱の方策を考え直し、大幅なコストダウンを図った。こうして、メーカーの小型・中型トラックへの標準装備を実現。その後大型トラック、更には建機や発電機などの産業エンジン用などにも開発対象を広げていった。
「大気汚染や地球温暖化などの環境問題に関わり、貢献していけるというのは、我々の与えられた使命でもありますが、やりがいのある仕事だと思っています。また、我々の子どもや孫、ひ孫の代までいい環境を残していくためにも、今後もいい製品を作り続けていきたいと思っています」という大森の言葉は、まさに今回のプロジェクトに携わってきたメンバー全員の共通の思いでもある。

